ブラッド

最初に紹介を受けたときの印象は頑固な靴職人という感じだった。背は私と同じくらいで高くない。年齢は50を超えているかもしれない。ケン・ローズウォーズを髣髴させるような風貌の男だ。かれはハードウェアの職人でとりわけ半田付け技術に優れていると紹介を受けた。名前を紹介するときに姓と名が日本と同じ順番だった。ゴールダンに聞くと昔のこの地方は姓名の順で名前を書いていたらしい。ほんとうかどうかはわからない。何しろ私の日常会話の英語のヒアリング力は非常に疑わしいのだ。

デジカメのACアダプターを日本に忘れてきてしまった。私の持っているデジカメはUSBのコネクタがついているのだがそこから充電できないというなかなかいかした仕様になっている。ザグレブに来て3日目ではや電池がなくなってしまった。ダバーに相談するとブラッドに言えば作ってくれるという。早速、月曜日の昼にブラッドに聞いてみる。ブラッドはほとんど英語をしゃべることが出来ない。身振り手ぶりで外部電源がないことを伝えると、なにやらクロアチア語でぶつぶつ独り言を行ったかと思うとおもむろに「10ミニッツ」との言葉を残しどこかに姿を消してしまった。しかし10分ところか20分たっても戻ってこない。仕方がないので自分にあてがわれた机で仕事に入ると1時間後くらいに「アイ・ハバ・ソリューション」とにこにこしながらやってきた。見るとPSPのACアダプタを分解して見事に私のデジカメにフィットしたものを作ってくれていた。言葉は通じないけど「ナイスジョブ!」親指を立てると彼も親指を立てる。

次の朝、オフィスに入ると廊下に彼がいた。「こんにちは」と日本語で話しかけてきた。無口なソルダリング・マスター、それが彼ブラッドだ。