新千葉 ガーベージ・コレクション

FPGA マガジンやインターフェースで書けなかったこと等をちょぼちょぼ書いてます。@ryos36

サービス業として

X-Fest 2005 がとりあえず終了した。とりあえずの意味は不明だが、2006 もあるであろうし、今年も後半に入れば、いくつもイベントがあるわけで、それに向けて仕切りなおしといったところか。
私が最も感心したのは、主催者がサービス業として、その精神を徹底させている点だ。来場者に対するサービスは当然だが、参加している会社に対する気遣いがあり、パートナーとしてやっていきましょうと言う意気込み、情熱がひとりひとりから感じられた。話を聞くと、主要都市をまわる間に、反省会を開き、どのようにしたら良くなるかという話し合いをしていたそうだ。これは、できそうで、なかなか出来ない。細かいところだが明らかに改善されている点があり、いたく感心した。技術的なフォローとして、技術相談の窓口をつくっていたのにも感心した。
ただ人を集めて、何人来ました万歳、とか(本末転倒になると景品を配って人を集めたりするが、、、、)、参加している各メーカはあくまで商売のこまだ!と高飛車にならないところがすばらしい。
私は従業員に常々「技術の上に胡坐をかくな」と教育している。私が見てきた優秀な技術者の何人かは、技術者として優秀ではあるが社会人として疑問符をつけなければならないような人がいて、ひどい時には人間としてどうなのだろうとまで考えさせられるケースがあった。
社会人として、9時から5時までちゃんと規則正しく働けるか?挨拶は出来るか?という事は当然問われる。技術的な知識があるだけではだめだ。
同様に、営業力に胡坐をかくような高飛車な商売は、いずれ廃れていくだろうと思う。それは昨今言われる「大企業病」という事に通じるかもしれない。私から見ると、大企業でなくとも、「営業力に胡坐をかく」ケースは見てきており、そういうところの人とお話をすると、不愉快な思いをすることは少なくない。要は相手を一個の人格ある個人、あるいは会社としてみようとしないのだ。彼らには資本金の額とかしか見えてないのであろう。
決して小さくない会社でありながら、サービス業が何たるかを考え、例え、立場が上司であろうとも、率先してパンフレットを配る社風はみていてすがすがしいものがある。

文章を書く

技術者にとって、文章を書く、ということは、多くの場合、難しい作業になる。それは、技術的な解法と、文章を書くということがまったく別次元であることが多いからであろう。多くの技術者は、この文章を誰が読むのか、誰のために書いているのかを見失い、技術的に自分が興味のあるところや、困難であった事を書いてしまいがちだ。
それを考えると、最近、インタフェース誌にのった記事「Virtexデバイス+ソフトCPUコアMicroBlazeによるFPGAによるMP3プレーヤの設計事例」には感心した。この記事を書いた人は X-Fest の主催者であるメメックの人だが、これは、筆者個人の高い能力、というのもあるのだろうが、社風と言うのもあるのではないかと考えている。サービス業とし徹底しているが故の客観的な視点というのが育まれる社風だ。
何が良いか?
まずストーリーがある点だ。MicroBlaze とは何かに始まり、ツールの説明、そして「ボードを動かしてみる」、ここまでが、初期導入になっており、その後に、「ペリフェラル・コアやユーザ回路を追加する」という応用が説かれており、その次に本題の「MP3デコーダ・ソフトウェアの実装」、更に、「ハードウェア回路によるスピードアップ」と、実に理路整然とした組み立てになっている。
本人に話を伺う機会があったのだが、2日ぐらいで出来たので、たいした事ない、と謙遜しておられた。しかし、まず、ここまで到達しようとすれば、多くの知識が必要となるわけで、それを2日で達成するとは大変な技術だと思う。であるから、技術文書としての価値も高い。
そして、文章としては、その苦労話になっていない点が素晴らしい。技術にとらわれていれば、本題の「MP3デコーダ・ソフトウェアの実装」からこまごまと書いてしまいそうだ。
「技術力、営業力の上に胡坐をかかない」は我々のテーマである。すでにそれを実践している会社があるのをみるにつけ、今後、我々も負けないように日々精進しなければならないという感をより強くした。

個性

同じこのテーマの中で、個性をどう伸ばすか?という点にもちょっと触れよう。私の個人的考えでは、個性は一番最後だ。まずは基礎練習からだ。素振りの出来ない人が、いくらイチローのまねをしてもだめだ。
相田みつを風にしたり棟方志巧風にするのは可能だが、その前に、基本的な書を勉強したり、デッサンをしたり出きるようにならなきゃだめだ。棟方志巧は自分の絵を描くのに、その下絵を山ほど書いたと聞く。自分が納得できるまで、練習しないとダメだ。
そして、もう一つは、我々は天才でもないし芸術家でもないと言うことを肝に銘じなくてはならない。であれば、個性の前に、人間として、社会人として成立してなけばならないし、プログラマーの前にサービス業の心得を習得していなければならない。そして、その上にアクセントして、ちょっとした個性があればいいのではないだろうか?
ほっておいても個性は出る。その前に基礎を勉強して欲しい。というのが経営者である私から若い従業員へのメッセージである。